美しい訪問者

ある日のこと、小屋の一家は、老人の奏でる楽器の音色に聞き入っていました。フランシュタインはその様を観察していましたが、
ふと、フェリックスの表情に憂鬱の陰りが差し込んでいるのに気が付きます。

老人は演奏を止め、フェリックスに
「どうかしたのか」と尋ねたようでした。

フェリックスは、「何も心配ありません」、と答え、
老人は再び演奏を始めました。
その時、誰かが扉をノックしました。

従者を連れ、馬に載った婦人の姿がそこにありました。
婦人は黒いスーツ、黒い厚手のベールに身を包んでいました。

「どんな御用でしょうか?」

アガサは婦人にそう尋ねると、婦人は甘美な声で
フェリックスの名前を口にしました。

フェリックスは婦人の声を聞くと、飛び上がるように駆けつけ、
婦人のベールを取りました。

光沢のある黒髪、均整のとれた体、かすかに赤く染まった頬。

婦人の天使的な美しさがフランシュタインの眼球に焼き付きました。

Felix seemed ravished with delight when he saw her, every trait of sorrow vanished from his face, and it instantly expressed a degree of ecstatic joy, of which I could hardly have believed it capable;

彼女を見るとフェリックスは喜びで有頂天になっているようだった。あらゆる悲しみは彼の表情から消え失せ、瞬く間にフェリックスの顔から無上の喜びが溢れ出した。彼がこんなに嬉しそうな表情をすることがあるなど、それまで私はほとんど想像すらできなかったほどだ。

フランシュタインは、喜びに道あるれるフェリックスを、

婦人と同等に美しいと思いました。

婦人も感動しているようでしたが、
それは「喜び」とは少し違った感情のようです。

婦人は泣いているようでした。

フェリックスは、婦人の涙を拭き、
婦人の手に敬々しく接吻しました。

婦人は小屋の中に招き入れられると、老人の前に跪き、
彼の手に口づけしようとしましたが、
老人は婦人を起こし、彼女を抱擁しました。

フランシュタインは、婦人の話す言葉が
小屋の住人達の言葉とは違うこと、
そして、小屋の住人たちは婦人の言葉を理解していない事に気が付きました。

彼らはジェスチャーを使ってなんとか意思疎通を図っていました。

いずれにせよ、この美しい訪問者は
フランシュタインにも特別な印象を与えたのでした。

I saw that her presence diffused gladness through the cottage, dispelling their sorrow as the sun dissipates the morning mists.

太陽が早朝の霧を追い払うように、彼女の存在が小屋の住人達に喜びを与え、悲しみを晴らしているのを私は見た。

追記

フランシュタインではないのですが、
ちょっと個人的に好きなアニメの話など。

最近目が離せないのが「進撃の巨人」です。

最新話までフォローされている方はご存知かと思いますが、
今、主人公属するパラディ島勢力と、大国マーレが戦争に突入しました。

パラディ島勢力が、マーレのレベリオ区というところに
テロ攻撃を仕掛けたのですが、
実は、先にパラディ島を攻撃したのはマーレの方です。

マーレの道具となった少年兵士、
ライナー、ベルトルト、アニーは、
実はパラディ島の住人と同じ人種エルディア人です。

しかし、ライナーなどマーレで暮らすエルディア人は、
かつて巨人の力と優性思想で世界を暴力で支配した
「罪ある人種」としてマーレで差別を受けていました。

エルディア奪還を目論むマーレ政府は、
巨人の力を行使できるエルディア人からマーレの戦士を集います。
マーレの戦士には、名誉マーレ市民の地位が約束されました。

厳しい競争を突破し、マーレの戦士となったライナー、ベルトルト、アニー。

このとき、彼らはまだほんの少年。

ライナーらは、パラディ島まで辿りつき、
パラディ島の壁を巨人の力で破壊し、
壁の中の街は巨人に蹂躙され、多くの民間人が死にました。
犠牲者の中には主人公エレンの母親も。

ライナー達は大量の民間人を殺害してしまったわけですが、
全てはマーレに指示されていたことでした。

しかし、ライナーらの攻撃で母親を失った
エレンにとってそんな事は関係ありません。

固く復讐を誓うエレン。

父から巨人の力を継承した彼は、
今度は味方と共にマーレにテロ攻撃を仕掛けます。

こうして悲劇は連鎖していきます。

ファンタジーの中のリアリティ

私的には、進撃の巨人の魅力は「善悪の相対性」にあると思います。

つまり、
「自分のとっての正義は、敵にとっての悪」
「敵にとっての正義は、自分にとっての悪」
ということ。

「正義の味方が悪者をやっつける」という構図ではなく、
こちらの正義を貫くことは、あちらにとっては限りない「悪」であり、
またちらも全く同じ論理を持っているのです。

それゆえ、主人公から見れば敵である
マーレ側のキャラクターにも、完全に同情できるんです。

そういう意味では、フランシュタインにも
通じるものがあるのかもしれません。

フランシュタインは、生来は善良な心を持っていたのですが、
恐ろしい外見のために人間に対して心を閉ざし、
破壊的な運命を辿ることになります。

決して悪ではなかった魂が、外部の状況によって
とてつもない悲劇を生み出す道具になってしまう。

これは現実に起こり得る事だからこそ、
「進撃の巨人」のキャラクターやフランシュタインに
同情してしまうのは私だけでしょうか。

ファンタジーでも、どこかにリアリティを感じさせる
作品はとっても魅力的だと思います。

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