フランケンシュタイン第六話をお届けします。

前回までのあらすじが気になる方は
こちらも御覧ください。

前回までのあらすじ

 

最初の記憶

フランケンシュタインの最初の記憶は、
決して鮮明なものではありませんでした。

“IT IS with considerable difficulty that I remember the original era of being: all the events of that period appear confused and indistinct.

私が思い出せる一番最初の記憶、
その記憶を思い出すのは今でも容易ではない。
あの頃の出来事は全て混乱し、不明瞭に見える。

 

はじめ、彼はまだ目がよく見えず、
自分の回りにあるものを認識することが出来ませんでしたが、
徐々に彼の目は光に慣れ、ほどなくして
自由に歩く事ができるようになりました。

屋外に出ると、強い光と熱に苦しめられ、
フランケンシュタインは日陰がある場所を探しました。

そうして彼は、インゴルシュタットに隣接する森林地帯に
避難したのでした。

そこでフランケンシュタインは激しい餓えと渇きを感じました。

木の実で餓えをしのぎ、小川の水で渇きを鎮めた彼は、
そこで横たわり眠りに落ちました。

目が覚めると、フランケンシュタインは
自分が孤独で、よるべもなく、
夜露をしのぐ衣服さえ十分に持っていないことを知ります。

I knew, and could distinguish, nothing; but feeling pain invade me on all sides, I sat down and wept.

私は何も知らず、
全く物事の見分けがつかなかった。

四方から苦痛が私を侵略するのを感じ、
私は座り込み、そして泣いた。

 

絶望に打ちひしがれていた彼を
柔らかい光が照らしました。

月明かりでした。

月明かりに照らされた森の夜道を、
彼は木の実を探しに再び歩き始めました。

すると、一本の木の根本に大きな外套があるのを見つかりました。

彼はその外套で自分の体を覆い、寒さを防ぎました。

今、彼が見分けることの出来るのは
夜空に照り輝く月しかありません。

しかし、その月を見つめていると、フランケンシュタインの心に
不思議と喜びが沸いて来たのでした。

森での暮らし

フランケンシュタインは、数日の間森の中にいましたが、
徐々に彼の五感は研ぎ澄まされ、鳥の歌声を聞こえるようになり、
また、種々の野草を区別できるようになりました。

ある日、フランケンシュタインは、
森の中で誰かが残した焚き火を見つけます。

その明かりと暖かさは、彼にとっては
全く新しいもので、彼を非常に喜ばせました。

しかし、彼が焚き火の中に手を突っ込むと、
苦痛が走り、すぐさま自分の手を炎の中から引っ込めました。

How strange, I thought, that the same cause should produce such opposite effects!

同じ原因でこうも真逆の効果が生まれるとは、
なんと不思議なことか!

フランケンシュタインは炎というものを注意深く観察しました。

そして彼は、炎を起こすには乾いた木の枝が必要なこと、
炎を大きくするには空気を吹き込めばいい事などを発見し、
今や彼は、炎によって寒さを防ぎ、また以前よりずっと良い食べ物を
食べられるようになりました。

しかし、それから間もなくして
食料不足が彼を悩ませました。

住み慣れた土地から旅立つ時が近づいて来ていたのです。

恐怖と敵意

3日歩き続け、彼は開けた土地にたどり着きます。

土地は降り続いた雪で一面真っ白でした。

「雪」もフランケンシュタインにとっては
初めて見るものでしたが、
足にまとわりつくこの白色の物体は
突き刺すような冷たさを持っていました。

餓えと寒さに苦しむ彼の目に、
遠くにある小屋が映りました。

扉が開いていたので、彼が中へ入っていくと、
火のそばに一人の老人が腰かけていて、
どうやらその老人は朝食を準備しているようでした。

老人はフランケンシュタインを見るやいなや、
叫び声をあげ、全速力で小屋から飛び出し、走り去って行きました。

それは老人とは思えない敏捷さでした。

この時、フランケンシュタインは初めて「人」という
存在を目にしたのでした。

その初めて見る人間が、自分を見ると即座に逃げ出してしまったこと。

こうした事全てが、フランケンシュタインには奇怪に思われました。

しかし、とにかくこの小屋は現状の彼にとっては、
全く素晴らしく快適な場所だったのです。

it presented to me then as exquisite and divine a retreat as Pandaemonium appeared to the daemons of hell after their sufferings in the lake of fire.

それは私にとって、素晴らしく、
神聖といっていいほどの避難場所だった。

例えて言えば、地獄の業火に苦しめられたあとの悪魔達の目の前に立ち現れた
「伏魔殿」のような場所であったと言えよう。

フランケンシュタインは老人が調理していた朝食を
貪るように平らげると、過度に疲れていた為、
そのまま眠りに落ちていきました。

目覚めたとき、時刻はすでに正午でした。

朝食の残りをポケットに詰め込み、彼は再び旅を続けます。

しばらく歩くと、彼の目の前に村が現れました。

整ったきれいな家並み、豊かな農作物。

こうした景観はフランケンシュタインにとって、
まことに驚くべきものでした。

しかし、彼が村の家に近づき、その扉を開けると、
子供たちは恐怖の叫び声をあげ、女性は気絶しました。

村全体が騒然となり、ある者は逃げ出し、
あるものはフランケンシュタインを攻撃してきました。

投石や弓で追いたてられたフランケンシュタインは、
村から離れ、しばらくその周囲をさ迷っていました。

彼は、村はずれに建てられた一軒の小屋を見つけましたが、
今度はその中に入ろうとは思いませんでした。

これまでの経験から、いかに自分が人間から憎まれているか、
それを疑う余地はなかったからです。

代わりに、彼は自分で小屋を作り、
そこを自らの住居としました。

Here then I retreated, and lay down happy to have found a shelter, however miserable, from the inclemency of the season, and still more from the barbarity of man.

それからこの場所に私は避難し、身を横たえた。
この場所は、例えどんなにみすぼらしくとも、
凍てつく自然の無慈悲と、
その自然よりも遥かに無慈悲な人間の残虐から
身を隠せる場所だった。
そんな場所が見つかり、私は幸せであった。

フランケンシュタインの小屋は、
目も当てられないほどみすぼらしいものでしたが、
彼がこれまで経験してきた森での暮らしに比べれば、
そこは「楽園」のような場所でした。

夜露に濡れることも無ければ、
一晩中身を刺す冷気に震えることもありません。

フランケンシュタインは
何か特別の問題が起こらない限りは、
そこに留まっている事にしました。(つづく)