ビクターの悪夢

ビクターは夢の中で故郷にいるエリザベスに会いました。

驚きと喜びが入り混じった感情の中で、
ビクターはエリザベスを抱擁し
彼女に初めての口づけをしました。

すると、エリザベスの唇は蒼白になり、
みるみる生気を失っていきます。

彼女の肉体も変化しているようです。

ビクターが抱いていたのはエリザベスではなく、
死んだ母の死体になっていました。

死体は白布にくるまれ、
その折り目には墓場の虫が蠢(うごめ)いていました。

ヘンリーとの再会

恐怖でビクターは目を覚ましました。

彼の額には冷や汗がびっしりとこびりつき、
体は痙攣し、顎はガクガクと震えていました。

窓から射し込む黄色い月明かりで、
ビクターは自分の創造したモンスターの姿を見ました。

それはにやりと不気味な笑みを浮かべ、
何かわけのわからない言葉を発していましたが、
ビクターはその意味を理解することはできませんでした。

モンスターはビクターの方に手をさしのべ、
あたかもビクターを引き止めようとしている風でしたが、
ビクターは恐怖に耐えきれず、部屋を抜け出し、
家の隣にあった墓地へと駆け込みました。

Oh! no mortal could support the horror of that countenance.

ああ! 何人もあのおぞましい顔の恐怖に耐えられないだろう。

ビクターは墓場で恐怖に震えながら一夜を過ごしました。

朝がきて、太陽の光が教会の白い尖塔を照らしましたが、
実験室に戻り、あのモンスターと再び対面する勇気は
ビクターにはありませんでした。

行くあてもなく、ふらふらと街を彷徨い始めたビクター。

そんな彼の目の前に一台の馬車が停まりました。

扉が開き、中から出てきたのは、
ビクターと故郷で学生生活を共にした旧友、
ヘンリー・クラーバルでした。

ヘンリーは反対する父親をようやく説得し、
ここインゴルシュタットでまもなく
ビクターと同じように大学生活を始めるということでした。

ヘンリーはちょうど今、インゴルシュタットに到着したところだったのです。

Nothing could equal my delight on seeing Clerval; his presence brought back to my thoughts my father, Elizabeth, and all those scenes of home so dear to my recollection.

ヘンリーと会えた喜びは、何ものにも代えがたいほど大きかった。
彼の存在は、父、エリザベス、そして故郷の景色など、
大切な私の記憶を呼び起こしてくれた。

ビクターは数ヵ月ぶりに、
心からの安心感と静かな喜びを噛み締めたのでした。

また、故郷の父とエリザベスが変わらず元気に
暮らしているという知らせは、
ビクターの心を非常に元気付けるものでした。

しかし、ヘンリーはビクターの異変に気がつきます。

頬は痩せこけ、顔は青ざめたているビクターの姿は、
どう考えても万全ではありません。

「君は病気なんじゃないのか?」

そう問いかけるヘンリーに、ビクターは自分がこれまで従事して来た
恐ろしい計画を明かすことはせず、
答えをはぐらかしましたが、
この時再び自分が抱えている問題が意識されました。

「ヤツをどうにか処置しなくては…」

ヘンリーがあのモンスターを見つけてしまう事だけは、
なんとしても避けなくてはなりません。

ヘンリーには少しの間自分を待っているよう頼み、
ビクターは一人で再び実験室へと戻りました。

勇気を振り絞り、やっとの思いで
実験室のドアを開けたビクターでしたが、
そこはもう、もぬけの殻になっていました。