メアリー・シェリーの「フランケンシュタイン」を
これまで紹介して来ました。

今回は、「フランケンシュタイン」はちょっとお休みして、
人物紹介をやってみたいと思います。

紹介したいのは、メアリー・シェリーの夫で、「ロマン主義」を代表する
詩人でもあった、パーシー・ビッシュ・シェリーという人。

フランケンシュタイン創作の経緯も同時に明かしていきたいと思います。

パーシー・ビッシュ・シェリー

シェリー

シェリーは1792年にイギリスで生まれました。

一人の弟と四人の妹の長男だった彼は、
祖父の遺産だけでなく、議員の地位も受け継ぐ権利がありました。

シェリーはイートン校で6年間勉強したあと、
オックスフォード大へと進学します。

イートン校時代より既に創作活動を始めていたシェリーですが、
彼の処女作は「ザストロッチ(1810)」という小説で、
この小説のなかでシェリーは、彼独自の無神論を展開しました。

オックスフォード時代に友人ホッグと共著した
「無心論の必要」という小冊子が大学が和に問題視され、
シェリーは退学を迫られます。

「無心論の必要」を否定し、自分をキリスト教徒であると宣言すれば、
大学へと戻る道もありましたが、シェリーはこれを拒否します。

さらに、この事件によってシェリーは父親と決別することになってしまいます。

シェリー19歳の時、彼は16歳の少女ハリエットを連れて、
スコットランドに駆け落ちします。

ハリエットとの結婚のあと、シェリーはイギリスに戻り、
レイクというところで2年間研究と創作に携わりました。

そしてシェリーの始めての長作、「クイーンマッブ」が完成します。

この作品はイギリスの先進的哲学者ゴッドウィンの思想を
表現したものとされています。

またこの頃、シェリーはゴッドウィンの娘メアリーを慕うようになります。

彼女が後に「フランケンシュタイン」を執筆する人です。

シェリーとメアリーは1814年に欧州大陸へと移りましたが、
経済的な事情のため、半年後には再びイギリスに戻らざるを得ませんでした。

1816年の一月、メアリーに二人目の男児が生まれます。
(一人目の子供は生後まもなく死去)

その年の五月、シェリーらはレマン湖のほとりで
詩人バイロンと生活を共にします。

彼らは夜がふけるまで、詩や幽霊といった話題について議論を交わしました。

そんなちょっと異様な「会議」の席で、
バイロンは各人が一遍づつホラーストーリーを書くことを提案します。

バイロン

この「コンテスト」の為にメアリーが書き上げたのが
「フランケンシュタイン」でした。

この年の12月、ハリエットがこの世を去ります。
(死因は自殺とされています。)

彼女の死体が発見されてから三週間後、
シェリーはメアリーと正式に結婚しました。

1818年に、シェリーとメアリーは英国を去り、
その後四年の歳月のなかでシェリーは、
「鎖を解かれたプロメテウス」など、
彼の主要な作品を完成させていきました。

1822年8月、シェリー30歳の誕生日の直前、
彼は海難事故にあい、イタリアの海で命を落としました。

西風の賦

シェリー、バイロンという英文学に輝かしい名前を残した天才詩人と、
メアリー、そしてハリエットがレマン湖畔で過ごした日々。

それが実際にどういったものであったかは
想像するしかないわけですが、
そこに居合わせたメンバーを考えても、
普通の会合ではなかった事は確かです。

そんな巡り合わせの中で生まれたのが、
「フランケンシュタイン」という作品なんですね。

最後に、シェリーの代表作の一つである
「西風の賦」(Ode to the West Wind)という作品の一部を
紹介させて下さい。

日本語訳は東大名誉教授の平井正穂先生によるものです。

Ode to the West Wind
BY PERCY BYSSHE SHELLEY

「西風の賦」
パーシー・ビッシェ・シェリー

O wild West Wind, thou breath of Autumn’s being,
Thou, from whose unseen presence the leaves dead
Are driven, like ghosts from an enchanter fleeing,

荒れ狂う西風よ! 迸り出る秋の息吹よ!
枯れ葉の群れが、今、見えざるお前の傍から吹きまくれられ、
妖魔から逃げ惑う亡霊のように飛び散っていく。

Yellow, and black, and pale, and hectic red,
Pestilence-stricken multitudes: O thou,
Who chariotest to their dark wintry bed

そうだ、黄色く、黒く、青白く、或いは不気味な赤味を帯びて、
あたかも瘴癘(しょうれい)に苦しむ者の群れのような、枯れ葉の群れが!
お前に翼をもった種子が暗い冬の寝床へと追いやられ、

The winged seeds, where they lie cold and low,
Each like a corpse within its grave, until
Thine azure sister of the Spring shall blow

そこで、凍え、地中深く眠ろうとしている、まさに、
墓場の下で眠る死骸のようにだ! だが、やがて、
紺碧の空を駆けるあの春風が、お前の妹が、やってくる、

Her clarion o’er the dreaming earth, and fill
(Driving sweet buds like flocks to feed in air)
With living hues and odours plain and hill:

そして夢を見ている大地に向かって嚠喨(りゅうりょう)たる喇叭(らっぱ)を吹き鳴らし、
(青草を食み勇み立つ羊のように、青空を仰ぐ蕾を萌えたたせ)、
野や山に生色を漲(みなぎら)らせ、香気をあたりに撒きちらすはずだ。

Wild Spirit, which art moving everywhere;
Destroyer and preserver; hear, oh hear!

西風よ、お前は天地に充満し躍動する烈しい霊だ、
破壊者であり保存者だ!—–聴け、この叫びを聴け!

平井 正穂 「イギリス名詩選」より引用

いかかでしたでしょうか。

平井先生の言語能力は凄まじいですね。(汗)

訳が原文を凌駕しているような。 (汗)

私なんかはの訳は平井先生の訳とは
比べものになりません。;^^

ここで紹介したのは、「西風の賦」のほんの一部です。

興味があれば、こちらのサイトで全文が載っていますので、
読んでみてはどうでしょうか。

https://www.poetryfoundation.org/poems/45134/ode-to-the-west-wind

それでは、今回は以上になります。

感想などありましたら、是非、お気軽にお送り下さい。

では、また次回お会いしましょう。