フランケンシュタイン第4話をお届けします。

前回までのあらすじが気になる方は
こちらをご覧下さい。

フランケンシュタインを読む1

フランケンシュタインを読む 2

フランケンシュタインを読む 3

小部屋で

もしビクターが人造人間を作り出すことに成功すれば、
彼は新しい「種族」の「創造者」として
無数の「子たち」から祝福されるでしょう。

かつてこんな事を経験した人が他にいたでしょうか。

また、もし生命を物質に吹き込む事ができるのであれば、
死んだ人間を生き返らせることも可能になるかもしれません。

こうした想像はビクターを励ましましたが、
彼は人造人間の製造に没頭するほど、
顔は青ざめ、体はやつれていきました。

あと少しのところでうまくいかない。

そんな事の繰り返しです。

それでもビクターは、明日こそはうまくいくかもしれない、
という希望を捨てませんでした。

極度の疲労に気を失いそうになりながらも、
もうほとんど「狂気」といっていいような衝動に駆られ、
彼は計画を進めていったのです。

彼の小部屋には納骨堂から持ってきた人骨やら、
動物の解剖された肉体などが溢れ、
そこはもはや大学生の小部屋というよりむしろ
「屠殺場」の様相を呈していました。

「いっそのこと辞めてしまおうか。」

何度そう思ったか分かりません。

それでも日に日に強くなる情熱に駆られ、
彼は自分の「作品」を完成へと近づけていったのです。

人間にとって知識とは

ビクターは人造人間の計画を推し進めている間、
故郷の家族や友人との交信を断っていました。

彼らのことを忘れたわけではありませんでしたが、
計画が完成するまでは、そこに全力を投じたかったからです。

この頃のビクターは、こうした自分の態度を
別に非難すべきものとは考えていませんでした。

全ては研究の為、だったからです。

しかし、全てを経験した今では、彼の考えは変わりました。

何故なら…

A human being in perfection ought always to preserve a calm and peaceful mind and never to allow passion or a transitory desire to disturb his tranquillity.

完成された人間は常に穏やかで平和な心を持ち、
情熱や一時の欲望によって心の平静を乱すようなことがあってはならない。

I do not think that the pursuit of knowledge is an exception to this rule.

知識の追求がこの原則の例外であるとは、私は思わない。

If the study to which you apply yourself has a tendency to weaken your affections and to destroy your taste for those simple pleasures in which no alloy can possibly mix, then that study is certainly unlawful, that is to say, not befitting the human mind.

あなたが打ちこんでいる研究があるとして、
もしその研究があなたの愛情を弱め、
どんな合金術で作り出せない
素朴な喜びを味わう感覚を損う傾向にあるなら、
そんな研究は確実に不当である。
つまり、そんな研究は人間精神にとって
相応しいものではない、ということだ。

 

いつの時代にも人が素朴な喜びを忘れず、
そこに満足を見出していれば、
世界はもっと平和だったはずです。

憔悴のビクター

ビクターが人造人間計画に取り組んでから、
冬、春そして夏が過ぎ去っていました。

いつもの彼なら、季節の変化が見せる自然の美しさに
心をなごませていたでしょう。

しかし、今のビクターは自然を楽しむ余裕すら失っていたのです。

彼の精神は消耗し、枯葉が地面に落ちる音にも怯え、
まるで悪いことをしている罪人のように
同級生たちを意図的に避けるようになっていました。

そして時々、変わり果てた自分の姿を見てゾッとしました。

それでも情熱だけがビクターの精神を支えていたのです。

「もう少しでこの仕事は終わる。
そうしたら運動とか、何か楽しいことをしよう。
そうすればこんな病気なんてすぐに消し飛ぶさ。」

そう自分に約束し、ビクターは人造人間製作の
最終段階へと踏み込んでいきます。

フランケンシュタイン誕生

11月の陰鬱な夜、ビクターは遂に彼の「作品」を完成させました。

時刻は既に夜中の1時をまわり、
雨は窓ガラスに打ちつけ、
唯一の明かりであったロウソクの火は消えようとしていました。

今にも消えようとするロウソクの明かりの中で
ビクターは自分の「作品」がゆっくりと
その黄色い目を開くのを見ました。

「それ」は激しく呼吸し、四肢を痙攣させました。

How can I describe my emotions at this catastrophe, or how delineate the wretch whom with such infinite pains and care I had endeavoured to form?

この惨劇をまのあたりにした
私の感情をどう表現すればいいのだろう。
あんな壮絶な労働と心労をしてまで作ろうと思い立った”こいつ”を、
一体どんなふうに描写すればいいのだろう。

ビクターは自分の作品を美しく仕上げたいと思っていました。

しかし、完成されたものは、
顔の各パーツが目と不気味な対照をなし、
見るに耐えない恐ろしい外観になってしまっていたのです。

Unable to endure the aspect of the being I had created, I rushed out of the room, continued a long time traversing my bed chamber, unable to compose my mind to sleep.

自分で作り出したものを見ることに耐えられず、
私は部屋を飛び出した。

そして、眠りにつけるほど心を落ち着かせることが出来なかったので、
私は寝室を長い時間行ったり来たりした。

ついにビクターは抗いがたい疲労を感じ、
ベッドに身を投げます。

「束の間でもいい、全てを忘れたい。」

そう思いながら、彼は眠りに落ちていったのでした。