中地です。

フランケンシュタイン第3話をお届けします。

前回までのあらすじが気になる方は
こちらもご覧下さい。

フランケンシュタインを読む1

フランケンシュタインを読む 2

では、いってみましょう。

大学でのビクター

ワルドマンという良き教師との出会いも幸いし、
ビクターは熱心に勉強と実験に取り組み、
同級生の中でも傑出した成績を収めます。

ビクターの大学生活を始めてから2年の歳月が過ぎようとする頃、
彼は実験道具の改良に成功し、それが評価され
大学で栄誉に浴しました。

大学ではもうこれ以上学ぶべきものはないと思った彼は
2年の間一度も戻らなかった故郷ジェノバの家族を思い出し、
帰郷を考えます。

しかし、ある「事件」によって彼の帰郷は延期されたのでした。

生と死の秘密

ビクターはかねてから人体の仕組み、
もっと言えばあらゆる動物の肉体の仕組みに
特別の興味を持っていました。

そして彼は生命の謎を解き明かす為には、
その対である「死」と向き合わねばならない、
という持論を持っていました。

もとより幽霊の恐怖や迷信などと無縁だったビクターにとって、
動物や人間の死骸を研究対象にすることは
別に恐ろしい事でも何でもありません。

むしろそれが「生と死の秘密」の糸口になるなら、
どんな事でもやってやろう、と彼は思っていました。

Darkness had no effect upon my fancy, and a churchyard was to me merely the receptacle of bodies deprived of life, which, from being the seat of beauty and strength, had become food for the worm.

暗闇は私の想像力にいかなる影響も及ぼさなかった。
そして、私にとって墓場とは、かつて美と力の座であったが、
今は虫の餌でしかない、そんな生命を奪われた肉体の
受け入れ場所でしかなかったのである。

ビクターは死がどのようにして生命と入れ替わり
肉体を侵食していくのかを観察しました。

はたから見れば彼は狂人のように見えたことでしょう。

しかし、彼は決して狂っていたわけではなく、
生命の謎を解く為に全神経を集中させていたのです。

こうして「死」の研究に没頭した結果、
ビクターは遂に生命の秘密を発見したのでした。

After days and nights of incredible labour and fatigue, I succeeded in discovering the cause of generation and life; nay, more, I became myself capable of bestowing animation upon lifeless matter.

昼も夜も、何日にも及ぶ壮絶な労働と疲労のすえ、
私は発生と生命の原因を発見することに成功した。
いや、それだけではない。
私は生命を持たない物質に
命を吹き込むことが出来るようになった。

物質に生命を吹き込む術を発見したビクターは
それまでの苦労を全て忘れ、心を喜びで満たしました。

歴史の偉大な賢者たちが探し求めても到達できなかったものが、
今や彼の手の届くところにあるのです。

しかし、この時ビクターが感じていた喜びと陶酔は、
決して未来の幸福に繋がるものではなかったのです。

全てを経験したあとに彼は、「知識」は使い方を誤れば
破滅をもたらす諸刃の刃であることを身をもって知ったのでした。

下記はビクターが回想の中で述べている言葉です。

Learn from me, if not by my precepts, at least by my example, how dangerous is the acquirement of knowledge and how much happier that man is who believes his native town to be the world, than he who aspires to become greater than his nature will allow.

私の言葉でなくても、せめて私の「実例」から学んで欲しい。
いかに知識の獲得が危険かということを。
そして、故郷の町が世界の全てだと信じている者の方が、
自己の素質が許す以上に偉大になろうと熱望する者より、
どれだけ幸せであるか、を。

物質に生命を吹き込む術をどのように使うべきか、
彼はまだ考えがまとまっていませんでした。

機械に生命を吹き込むには、機械の手足や筋肉を形成する材料が要ること、
そしてそうしたものを用意するのは容易でないことは明白でした。

しかし、彼は「生命の秘密」の発見という成功体験によって
非常に興奮していたので、もはや不可能なことなどないように思われました。

「”人型”の機械に生命を吹き込むこともできるではないか..」

この時ビクターの心には既に
人造人間の制作という計画が出来上がっていたのです。

それからビクターは数ヵ月を費やして
人造人間製造に必要な材料の調達に奔走していったのでした。