メタファーの威力~入れ物編~

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メタファーの威力

今日のテーマは「メタファー」です。

「彼女は恋をしている」と英語でいうとき、
なぜ

She is in love.

といい、

She is doing love.

ではないのか。
その答えは、メタファーにあります。

メタファー、たとえ、比喩など、
いろいろな言い方がありますが、要するに

抽象的なものを、具体的なもので理解する

という事です。

これは文学者の専門領域のような
難しいものではありません。

むしろ、私達は日本語でも当たり前に
メタファーを使っています。

例えば、

「昨日の講義は、難しくて消化できなかった。」

という文。

この文では、「消化」という言葉が、
メタファーとして使われています。

言い換えると、
「講義の内容が難しくて理解できなかった。」
ということですね。

講義の内容は、知識であって、食べ物と同じ意味で
”消化”するものではありませんよね。

しかし、食べ物を食べて、消化し、吸収することと、
情報という抽象的なものを、取り入れ、頭の中で整理し、
自分の知識体系に取り込んでいくこと。

また肉体の成長に食べ物が不可欠なように、
精神の成長には知識が不可欠ということ。

このように、「知識」と「食べ物」の間に
類似性をみているからこそ、
「消化」という言葉が「(知識を)理解し自分のものにする」
という意味で使われているのです。

メタファーには、このように、具体的なものと
抽象的なものの間の類似性を利用して、
抽象的なものを分かりやすくしてくれる働きがあります。

そして、先程の

「昨日の講義は難しくて消化できなかった。」

という文は、特に技巧を凝らしたものではなく、
日常的なものですね。

このように、
私達は、日常的にメタファーを使っています。

今日の本題は、英語をメタファーという視点から
考えていくこと。

特に、”入れ物”と呼ばれる種類のメタファーを
詳しくみていきたいと思います。

”入れ物”のメタファーとは

「彼女は恋をしている。」

という英語が

”する”という動詞doを使って、

She is doing love.

ではなく、実際は、

She is in love.

ということ。

その理由を詳しくみていくことにしましょう。

この文では、前置詞inが使われています。

つまり、直訳的には、この文は
「彼女は愛の中にいる。」
という意味になります。

inの役割はもともと

The apple is in the box.
(リンゴはその箱の中に入っている。)

というように、何かが、”入れ物”に入っていることを
表すことだからです。

当然、”恋”は、物理的な物ではありません。

それにもかかわらず、”彼女”が”恋”の”中にいる”
ことが、すなわち、”恋をしている”という”状態”
としてイメージされているという事実。

ここから、She is in love.という表現がでてきます。

このように、英語では、
主語が、ある”状態”にあることを
主語がその状態の”中に入っている”こととして
表現していく特徴があります。

この原則を一言でいうと、

STATE IS CONTAINER(状態は入れ物である。)

となります。

他にも、いくつかの例を挙げておきましょう。

“入れ物”のメタファーの例

He is in trouble over money.
(彼は金のことでこまっている。)

She is living in luxury in France.
(彼女はフランスで贅沢に暮らしている。)

You’re in a great danger.
(あなたは大変危険な状況にいます。)

She left in a bit of a hurry.
(彼女は少し急いで立ち去った。)

これらの例では、
trouble(面倒),luxury(贅沢),danger(危険)、hurry(急ぐこと)は
いずれも、物理的に存在するのではありません。

が、「主語がその中に入る」という言い方で
主語がそれの”状態にある”とか”経験している”
という意味になっていることがわかります。

なぜ私達はメタファーを使うのか

メタファーは普段意識しないほど、自然なものです。

「彼の理論は根底から崩れ去った。」

これなども、メタファーですね。

「理論」という抽象的なもの(物理空間には存在しないもの)
をあたかも、”崩れ去るもの”、つまり、
あたかも物理空間に存在するものかのように捉えられています。

私達がメタファーを日常的に使っているという事実、
むしろメタファーを好むという事実は
言語と人間精神の発達のプロセスと関連がありそうです。

人間の経験は、感覚的なものから始まり、
成長するにつれ、抽象的な概念を扱えるようになります。

子供時代に、私達の経験は感覚的なものから始まります。

それは、砂場にいって、砂の城をつくり、
それが崩れ去るのを経験するといったような事です。

その後、大人になるに連れ、
複雑な社会に適応していく過程で、
抽象的な事も考えるようになります。

例えば、「理論」などは、抽象的で、
本来の人間には必要のないもの、生存には無関係なもの、です。

こういった抽象的なものを、
”感覚的”に把握していくための機能として、
メタファーが生まれたのではないでしょうか。

「理論」であれば、「砂の城」のように、築き上げたり、
崩したりできるもの、というイメージで捉えようとする、
という事です。

ここまで、メタファーの発生について、
とりとめもなく、思考を巡らせてみました。

もう一つのポイントは、
メタファーの使い方には、言語ごとに差異があるということ。

英語と日本語でも、メタファーの作り方には違いが存在します。

実際、日本語では、
「彼女は恋の中にいる。」
というと、不自然な感じがします。

一方で、英語では、
She is in love.が自然な表現だということ。

私は、このメタファーの作り方の違いが
日本人が英語を学ぶ際の障壁の一つだと考えています。

勿論、be in love=「恋をしている」
のように、イディオムとして覚えることも一つの手段です。

しかし、

STATE IS CONTAINER(状態は入れ物である)

という”原則”を知れば、
この原則から多くの表現を理解できます。

be in troubleも、be in a hurryも同じ原理だからです。

つまり、英語のメタファーの法則を学んでいけば、
何個もイディオムを覚える必要はなく、効率を大幅に上げられます。

是非、メタファーという視点から
英語や、その他の言語を観察してみてください。

きっとおもしろい発見があるはずです。

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  1. 2017 08.15

    言語と思考

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運営者プロフィール


中地 あきら

某都内有名私大で数学を学ぶ。

数学研究のかたわら、語学の魅力に取り憑かれ、
英語、ドイツ語、フランス語、ラテン語などを独学する。
哲学、心理学、投資などにも興味を持ち、
国内、国外問わず、本を読み漁る。
また、インターネットを通して、様々な国の友人を得る。

大学卒業後、予備校の世界へ。

数学を教えながら、語学ができることで見える世界と
日本語のみの世界の差を痛感する。
「英語でみえる世界」をひろめるために、
英語ブログ「英語で新しい自分になる」を設立。

趣味は、読書、ウォーキング、Fxデイトレード など。

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